ナショナルカクテルウィーク特別インタビュー[ミスター サルバトーレ・カラブレーゼ in バーショー]

「マエストロ」と呼ばれ、世界中のバーテンダーの尊敬を集めるサルバトーレ・カラブレーゼ氏に貴重なお話を伺いました。

ご自身初めての東京 インターナショナル バーショーはいかがですか。
これで最後にしたくないという思いが強いです。海外のバーショーの雰囲気を踏襲しつつ、よくアレンジされていて感銘を受けました。世界中のバーショーはそれぞれの地域の特色を活かした演出に醍醐味がありますが、東京のバーショーもオリジナリティに富んでいました。記念ボトルを出しているという点が特に素晴らしいですね。限定品のために多くの方がオープン前から並んでいて驚きましたが、それだけ並んでいると会場がオープンから賑わうんですね。よく考えられているなと、演出の上手さに感動しました。世界のバーショーは午前中にオープンしてもみんな13時以降にしか来ませんから(笑)。

世界のバー文化に精通しているサルバトーレ氏から見た日本のバー文化とはどのようなものでしょうか。
国や地域によってお酒の楽しみ方が違いますが、世界中共通しているのはバーは劇場であるということです。どこにおいても歓迎の気持ちは変わりません。その意味で日本は特に素晴らしいバー文化を持っていると思います。私はどんどん盛り上げる接客をしますが、日本は落ち着いたおもてなしが完成されていますよね。とても気持ちいいものです。それに、日本のバーテンダーの作るカクテルはもはや芸術の域に達していますし、技術的には世界に類を見ないものだと感じています。

作り手として何を思い、何を考え、何を大事になさっているのですか。
毎日、目の前のお客様の心に耳を傾け、どこまで寄り添えるかを考えます。そして、どんなカクテルなら喜んでもらえるかをイメージします。最終的には素材やレシピよりイメージの方が大事になってきます。私は、カクテルを飲むときに必ず目を閉じます。そして、人生に思いを馳せます。まず舌の先で味わうのは、幼少期の何もかもが目新しい気持ち。口の中に様々な味わいが広がる段階は、色々なことを知りたい青年時代。喉の奥で感じる渋みは、成熟した自分が学んだ人生の辛酸。舌一つで人生の旅を感じられるものが最も素晴らしいカクテルなんです。

数多くの素晴らしいシグネチャーカクテルを生み出しているアーティストとしての心構えをお教えください。
バーテンダーの夢とは、100年後も自らの創作したカクテルが飲まれることです。カクテルもいわば芸術と同じで、グラスというキャンバスに絵を描いていく作業です。カクテルのベースは、絵画におけるキャンバスにあたります。ミケランジェロの絵が良いキャンバスでなければ後世に残らなかったように、カクテルを作るうえでベースの味を生かすことは絶対に忘れてはなりません。生きていれば毎日違う味に出会うのだから、どこかではっとする場面はあるはずなんです。がむしゃらに探すのではなく、アイデアがやってくる瞬間を逃さないこと。思考を鍛えるというよりは、インスピレーションを積み重ね、直感を大事にすることの方が重要に思います。

セミナーでおっしゃっていた「バーテンダーも最終的には人間である」という言葉が印象的でした。バーテンダーをはじめ、バーを愛する皆さんへメッセージをお願いします。
好きなことをやりなさい。自分が愛することをやりなさい。あなたが選んだ道は、自身のキャリアでありライフワークなのだから、情熱を持ってやりなさい。今やバーテンダーもスターになりえる時代になってきています。バーテンダーはいっぱいの愛を抱き、それを一杯に捧げることを決して忘れないでください。そしてカウンターに座る皆さんは、その愛を存分に受け取ってください。バーにいる人々で、そんな風に愛を広めていってほしいなと思います。

Mr. Salvatore Calabrese(サルバトーレ・カラブレーゼ)
「マエストロ」と呼ばれ、世界中のバーテンダーを指導し、多くのイベントに招聘され、カクテルコンペティションの審査も行う、世界的に有名な“伝説のバーテンダー”であり、彼に関する逸話は多数ある。
デュークスマティーニの生みの親。1杯あたり5,500ポンド(約83万円)の価値を持つ世界で最も高価なカクテルの記録を樹立。
世界各地でバーを経営しており、ベストセラーの著書も多数ある。